with MYU + MONO Presents
世界は突然眠ってしまった。
理由はわからない。
残された人たちのそれぞれ最後の
たまゆらを描く連作短編。
監督・脚本 土田英生(第一回監督作品)
新着情報
イントロダクション
世界は突然、静かに終わる。人々は眠っていく。理由も分からず。観終わってもきっと分からない。それはこの世の中に私たちがどうして存在しているのか分からないのと同じことだ。終わって行くかもしれないと薄々気づいた人々はどうすることもできない。最後までくだらない話をして……そして眠っていく。そうした、それぞれの一瞬(=たまゆら)を描く。
結成30年の劇団、MONOの代表でこれまで数々の舞台を創作、また、テレビドラマ「斉藤さん」「崖っぷちホテル」「東京タワー」「天才! 柳沢教授の生活」、映画『約三十の嘘』『初夜と蓮根』など数多くの脚本を書いてきた土田英生が、自身の小説「プログラム」(河出書房刊)を原案に脚本を書き下ろし、初めて監督も担当。中越典子、鳥谷宏之、そして金替康博などMONOのメンバーも総出演で送る群像劇。
いい天気の中、燕が飛んでる。
そして人々は眠っていく……
あらすじ
ある地方都市。
空にはツバメが飛んでいる、そんな穏やかな天気の朝。人々が次々と倒れて眠っていく。どうやら人によって症状は異なるようで、眠らずに済んでいる人も一部にはいる。けれど残された彼らも戸惑うばかりだ。
原因は分からない。テレビなども放送をやめ、ネットの更新もされないところを見ると世界的に起こっている現象なのかも知れない。
その町にある避難所。残った市役所防災課の職員が二人。そして体育館には数名の避難者。
なすすべもなく彼らはただ座っている。そして……くだらない話をしながら、やはり順番に眠っていってしまうのだった。
市役所職員の高島と同級生の娘との年の差恋愛。同じく職員の佐久間と昔から想い合っている女友達の三田村。D Vから抜け出そうとしている女性三人組の美土里、満智、琴美、すれ違い夫婦である田中智則と佐知、近くのOLである長尾と笹倉、タウンエフエムのアナウンサーとミキサー、人嫌いの中本、避難所の場所取りで揉める家族と会社員……。
それぞれの最後の短い時間(たまゆら)が緩やかなつながりで描かれる短編集。
……そして皆が眠ってしまった世界の上にツバメが飛んいた。
監督のコメント
舞台を中心に活動しながら、テレビや映画にも『脚本』という形では数多く関わってきた。しかし監督はしたことがなかった。これが全くの初めてだ。
私は無駄話を書くのが好きなのだが、映像作品では尺の関係でそうした部分がカットされることが多い。主人公の目線で進む物語ではどうしても“展開”が中心となるからだ。なので今回、あえてほとんどが無駄話で構成されているものを創ろうと思った。だから、いわばこれは短編の集まりだ。原案になっている自分の小説「プログラム」がそもそもそうした話なのだ。
もう一つ、この映画でよかったことは役者の演技を、演劇と同じように演出させてもらえたことだ。時間の制約のある撮影現場ではどうしても段取りだけを決めて、あとは役者さん任せになることが多い。見知った俳優に参加してもらえたことで、このことが実現できたと思っている。だからほどんどのシーンを長回しで撮らせてもらった。
深刻な背景はあるのだが、その上で繰り広げられる人々の馬鹿馬鹿しい会話を楽しんでいただけたらと思っています。
土田英生 劇作家・演出家・俳優/MONO代表
1967年3月26日生まれ 愛知県出身
1989年に「B級プラクティス」(現MONO)結成。1990年以降全作品の作・演出を担当する。1999年『その鉄塔に男たちはいるという』で第6回OMS戯曲賞大賞を受賞。2001年『崩れた石垣、のぼる鮭たち』(文学座)で第56回芸術祭賞優秀賞を受賞。2003年文化庁の新進芸術家留学制度で一年間ロンドンに留学。近年は劇作と並行してテレビドラマ・映画脚本の執筆も多数。その代表作に、映画『約三十の嘘』『初夜と蓮根』、テレビドラマ「崖っぷちホテル!」「斉藤さん」(NTV)など。2017年に小説「プログラム」(河出書房新社)を上梓。
原案
「プログラム」
純粋な“日本人”以外はバッジ装着義務のある、閉じた人工島「日本村」には、夢の次世代エネルギーMG発電の本拠地がある。ある日、空に赤い小さな雲が浮かび……その日を描く連作長編小説。
著者:土田英生
出版社:河出書房新社(2017/2/28発売)
コメント
土田さんの映画初監督作品を観て、改めて土田さんの才能に感じ入り、彼のみ創造し得る世界を堪能しました。この映画は、全く初々しくないデビュー作です。土田さんの世界が、演劇から映画へと、当然のように増殖していくその様を、ぜひスクリーンで味わって欲しいです。
大谷健太郎(映画監督)
ほのぼの楽しめて微妙に切ない素敵な映画♫
清水崇(映画監督)
土田さんの描く登場人物はいつも斜め前向きだ。
真正面じゃないところが人間であるし、共感できるし笑ってしまう。
不思議な設定なのにどの登場人物もなぜかそれを受け入れている。
でも観ているうちにその不思議な設定がどうでもよくなる。
なぜなら、この映画で描かれているのは斜め前向きな人間であり、設定じゃないから。
そしてみんないい人たちだからだ。だからこそ愛おしくも切ない後味を私は感じたのだと思う。
中村ノブアキ(JACROW 代表・脚本家・演出家)
知り合ってけっこう長いのだけど、つっちー(土田くん)の他につっちーみたいな人を見たことがない。たぶん、つっちーは「つっちー」という特殊なジャンルの生き物なのだと思う。そしてその第一人者はむろんつっちーである。
つっちーはとても優しいけど、決して甘くない人だ。
その点がわたしとは真逆だ。
わたしはあまり優しくないが、けっこう甘々な人間であって、残念ながら人間としての出来はつっちーの方が断然上である。
この映画をみると、つっちーがとてつもなく優しい人だということがわかる。
でも、やっぱり甘くはないのだ。
一ヶ所だけ「これ、わざと?」という瞬間があるのだけど、それは今度本人に直接聞いてみることにしよう。
マキノノゾミ(劇作・脚本・演出・俳優)
※敬称略・順不同